2020年6月より東京医科歯科大学・大学院医歯学総合研究科・教授に着任致しました 柿沼 晴(かきぬま せい)と申します。前任の笹野准教授が本学循環器内科の主任教授に昨年転任され、後任として当分野を主宰することになりました。
私はこれまで本学の消化器内科で、臨床情報を基盤とした研究と教育を行ってきました。消化器の疾患、特に肝臓・胆道領域において、分子生物学と細胞生物学を駆使して病態生理を解明する研究を中心に行っています。本学に来る前は、東京大学医科学研究所・中内啓光教授の研究室で研究員として指導を受け、幹細胞生物学の研究をしておりました。 このような背景をもとに、新しくスタートした当分野では、幹細胞生物学の視点を利用して、「臨床情報に根ざした疾患病態生理の解明」をモットーに、消化器領域を主軸とした研究・大学院教育を展開したいと思います。
最近の研究としては、後述のように、ヒトiPS細胞培養系を利用して、肝臓の細胞、胆道系の細胞を誘導し、これらの「ミニ臓器=オルガノイド」を利用することで、病気のモデルを作り、病気の中で重要な分子、治療標的になりうる分子を同定しよう、という研究を行っています。このような研究は、臨床研究から情報を得て、ヒトの「正常な」細胞を用いることでアドヴァンテージが生まれ、これまでの研究戦略(例えば、マウスや普通の細胞株の研究)では見つからなかった、新しい内容を発見できる研究になるものと考えています。本学で継続して研究してきたので、現在も、このような研究戦略を共有できる、本学の消化器内科、統合研究機構を含めた多数の先生方と一緒に研究を進めています。
「ポストコロナ」時代にむけて、学生、大学院生、若手の研究者の先生方と一緒に力をあわせて、新しい視点から当分野を育ててゆきたいと思います。
「肝疾患における神経伝達物質の意外な機能を解明」 2020年 Hepatology Communications に発表 https://aasldpubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/hep4.1459
「ヒトiPS細胞を用いた疾患モデルを開発し、難治性肝疾患の病態解明に成功」 2019年 Journal of Hepatology(IF 18.946)に発表 第23回日本肝臓学会大会会長賞受賞 http://www.tmd.ac.jp/archive-tmdu/kouhou/20190319_1.pdf
「ヒトiPS細胞由来肝星細胞の作製と細胞間相互作用を介した肝細胞の成熟化に成功」 2019年 Scientific Reportsに発表 http://www.tmd.ac.jp/archive-tmdu/kouhou/20190215_1.pdf
「iPS細胞由来肝細胞系譜細胞を用いたB型肝炎ウイルス感染培養系の構築」 2016年 Scientific Reportsに発表 http://hepato.umin.jp/kouryu/kouryu39.html
日本医療研究開発機構(AMED)肝炎等克服緊急対策研究事業 「ヒトiPS 細胞誘導性肝オルガノイドを用いた革新的疾患モデルの開発および肝線維化と発がんを抑止する治療法の創成」 日本学術振興会 基盤研究B
「肝線維化治療の標的分子同定にむけたヒトiPS細胞由来肝組織様オルガノイドの開発」 ほか多数
ヒトiPS細胞やオルガノイドを用いて、消化器(特に肝臓)疾患の病態生理、バイオマーカーの新規開発、疾患標的分子の探索などの研究を行っています。